いま改めて、筋膜とは何か?

近年、「筋膜」という言葉を耳にする機会が増えました。

テレビや雑誌、SNSでも取り上げられ、「筋膜リリース」という言葉だけが一人歩きしている印象もあります。

では実際に筋膜とは何なのか。

そして、なぜ今、筋膜が注目されているのか。

あらためて整理してみたいと思います。

目次

筋膜とは

「筋肉を包む膜」ではない筋膜は、単に筋肉を包んでいる薄い膜ではありません。

筋膜とは筋肉・骨・関節・内臓・神経・血管などを含め、全身を立体的につなげている結合組織のネットワークです。

一部だけを見れば「膜」ですが、全体としては

  • 身体の形を保つ、支える
  • 力を伝える
  • 感覚を伝える

といった役割を担っています。

つまり、身体を一つのユニットとしてまとめ上げて連動させている組織と言えます。

筋膜は「感覚の組織」でもある

筋膜の大きな特徴の一つが、非常に多くの感覚受容器を持っていることです。

筋膜には「固有受容器」と呼ばれる豊富な感覚センサーが存在し、機械受容器(筋紡錘、腱器官など)や侵害受容器が含まれ、体の位置、動き、張力、痛みなどの情報を脳に伝え、姿勢の制御や運動の調整を担っています。

筋紡錘

筋肉内にあり、筋肉の長さの変化や伸張速度を感知します。

姿勢の維持や運動制御に不可欠な情報(深部感覚)を脳に送ります。

腱紡錘

筋肉と腱の境界にあり、筋肉の張力(収縮の強さ)を感知します。

筋肉の過度な緊張を防ぐ役割も持ちます。

自由神経終末

筋膜の間質に存在し、牽引力(引っ張られる力)に敏感で、主に固有受容感覚を担います。

※固有受容感覚:
目を閉じたままでも自分の腕がどこにあってどのくらい曲がっているのかなんとなく分かりますよね?この「見なくてもわかる感覚」を固有受容感覚と言います。

侵害受容器

痛覚のセンサー

筋膜には痛覚受容器(侵害受容器)が豊富に存在し、痛み(筋膜性疼痛)の発生源となります。

炎症や虚血による発痛物質(痛みを引き起こす物質)がこれらを刺激します。

これらの受容器は、体性感覚として体の位置(固有受容感覚)、動き、張力、痛みなどの情報を脳(特に小脳など)にリアルタイムで伝える情報伝達の機能をはたしています。

そして脳はこれらの情報を受け取り、姿勢の維持、バランス調整、スムーズな運動を可能にします。

そのため筋膜が硬くなると、不正確な情報が脳に送られ、過剰な筋緊張や慢性痛を引き起こすことがあります。

感覚的には、「イメージ通りに動けない」「硬い、ぎこちない」感じがします。

日常の例としてわかりやすいのは、「避けたつもりなのにタンスの角に足の小指をぶつける」あの現象です。


「レントゲンでは異常なし」「筋肉や関節だけ見ても説明がつかない」そういった不調の背景に、筋膜の状態が関わっているケースは少なくありません。

なぜ筋膜は硬くなるのか

筋膜は本来とても滑らかで柔軟性のある組織です。

しかし、

・同じ姿勢や動作が長時間続く

・偏った体の使い方

・過去のケガや手術の影響

・ストレスや自律神経の乱れ

などが積み重なることで筋膜が硬くなり、動きにくくなります。

この変化は、必ずしも「強い痛み」として現れるとは限りません。

初めは、「朝、動き出しにくい」「疲れが抜けにくい」「理由は分からない不調が続く」といった曖昧なサインとして現れることが多いのです。

部分ではなく「つながり」で身体を見る

筋膜の特徴は、一か所の影響が別の場所に現れることです。

例えば、

・腰痛の背景に、股関節や足部の筋膜の影響がある

・肩の動かしにくさに、胸郭や首の筋膜の緊張が関係している

こうしたことは珍しくありません。

だからこそ、「痛いところだけをどうにかする」という考え方では変化が起きにくいのです。

筋膜を入り口に、身体全体のバランスとつながりを読み取る視点が重要になります。

今、あらためて筋膜を見る意味

情報が溢れ、セルフケアや対処法も簡単に手に入る時代です。

それでも不調が繰り返される方が多いのは、身体が発している微細な変化やサインが、見過ごされやすくなっているからかもしれません。

筋膜は、そのサインを非常に正直に反映します。

今あらためて筋膜を見ることは「不調をどう消すか」ではなく、身体が今、どういう状態にあるのかを理解することにつながります。

それが、安心して日常を過ごすための大切な一歩になります。

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